2014年5月12日月曜日

よみきかせ:アンガスとあひる


かなり古典の絵本なので、現代の子供たちには絵柄や訳文がなじみにくいかな、と心配しましたがアンガスのうなり声やアヒルの鳴き声が始まるとちょっと喰いついてきてくれたかな、と感じました。

大人にとっては、アンガスが出かけて、アヒルに驚いて、帰ってくる。ただそれだけのお話?と思われるかもしれませんが、それはまさに「行きて帰りし」という子供のための物語の基本の構造になっているので、子供はアンガスと心を合わせて、思い切って「それっ」っと家から飛び出して、一つの新しい世界にちょっとだけ触れて、そしてまた帰ってくる。


ちょっと冒険をして、怖い目にあって、戻ってきて安心する。
またちょっと冒険をして頑張って、また帰ってきて安心する。

それはたとえば、初めて行く公園であったり、保育園・幼稚園であったり、また初めて食べる野菜であったり、おまるに挑戦してみたり。
この行ったり来たりを繰り返さないと、子供は前に進めないのです。
こどもの成長は、そういうことの繰り返しだと思います。

だから、子供が「怖い目」にあいたがっているときには、危ないからとなんでも先回りして禁止せずに、ちょっと「それっ」と出かけるのを見過ごす。
そして、帰ってきたときに、また受け入れてあげて安心させてあげる。
大人がグラグラせずに、そういう成長のプロセスを受け入れてあげることも大切だよ、というメッセージがこのお話にはあると思います。

が、そんな説教くさいことが実際にこの本に書かれているわけではないので、それはなんとなく、読む大人が勝手に感じて、子供には純粋に「娯楽」として読んでもらいたいと思います。

瀬田貞二さんの名翻訳なので、古くても、かえって味わいのある言葉が随所にあふれています。
絵本には絵本特有の言葉づかい、単語の選びがあると感じます。それは、現代の日常語にはなじまないものもあるかもしれませんが、そういう「本ならではの言葉の味わい」を絵本によって知ることで、幼い耳に「美しい文学言葉」を蓄積してあげることも、絵本を読んであげることの意義だと思います。
古典絵本が好きなので、今後もめげずに読んでいきたいと思います。


『アンガスとあひる』
作・絵: マージョリー・フラック
訳: 瀬田 貞二
出版社: 福音館書店

 

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