2017年1月12日木曜日

ドールハウスに憧れて『ティリーのねがい』

この冬息子は、休みの日ごとにドールハウスを作っています。
日本酒が入っていた木箱を横に倒して二階建てに見立て、壁紙を貼り、絨毯を敷き、家の前には松ぼっくりでこさえたクリスマスツリーとスケートリンクもあります。そして外枠をひとしきり作り終えると、今度はテーブル、電気スタンド、洋服ダンスとハンガーなどを作り足し、クマちゃんをあっちへこっちへと移動させて楽しんでいます。
私自身が、何かしらチマチマと作って遊ぶことが好きなので、息子もそれを見て真似しているのでしょう。
最近は紙工作でもぬいぐるみでも、手作りキットというものがあって簡単に美しく作れるものが多く出回っていますが、こういうキットで作るものは「生み出す」というよりも、完成品を「再現する」作業のように思えます。
モノを作る楽しさは、やってみなければ分からない楽しさでもあるので、自分の頭で考えて、それを少しづつ絞り出していくような、そんなモノづくりのやり方が、私は好きです。





息子がドールハウスを作り始めたのは、『ティリーのねがい』という本がきっかけになりました。
ティリーはドールハウスの召使ドール(人形)ですが、召使いでいることに嫌気がさしてい家を飛び出し、自分だけのハウスを作るというお話です。

廃材を使ってベッドや絨毯を作り、壁紙をきれいに貼りかえる様子はとてもワクワクします。節約家で、「まだ使えるわ」といってし修理をしたり繕ったりもします。
しかしこの話が面白いのは、節約家で勤勉なティリーが、ただのおりこうさんではなくて、けっこう性格が悪いところ。家探しの手伝いを買って出てくれたティディ・ベアのエドワードに対する高慢な態度と言ったら!それでも必死に役に立とうとするエドワードが健気で泣けてきます。
そしてもう一つの面白ポイントが、ティリーが独り言のなかでちょいちょい挟んでくる格言やことわざ。
「ためらうものは チャンスをにがす」
「ぼうけんなくして、うるものなし」
「意志あるところに 道おのずからひらく」
「きょうの一針(ひとはり) あしたの十針(とはり)」 などなど...
ひとりでぶつぶつ言いながら粛々と作業を進めるティリーは、手仕事の時間を心底楽しんでいます。分かるなあ、この感じ。

この本は絵本といっても、一ページあたりの文字数が多くて、5分ぐらいで簡単に読み聞かせできるボリュームではないので、本がしっかり読めるようになってきた6歳ぐらいの、本が好きな子にお薦めです。しかし、自分で黙読するよりは読んであげることをお薦めしたい。
ティリーの、エドワードに対するいちいちの物言いや、ことわざ混じりの独り言は、声に出して読むことで、彼女の小賢しさがいっそう増して面白いのです。


* 『ティリーのねがい』 フェイス・ジェイクス 作 /  小林いづみ 訳 (こぐま社)

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